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 風かおる5月、日に日に木々の新緑はあざやかさを増しお日様の光も力強くなってきて、もう初夏のきざしを感じられるようになりましたね。
G・W、どこかへお出かけしましたか?ぼくは...おシゴトでした。(稼ぎ時ですから)
店先のウィンドウ越しに見ると、綿・麻系の春・夏物・・・へと軽やかになりました。
そんな軽めの服でも、陽気によっては汗ばむ日もあります。
汗はお洋服にとって大敵!シミや変色、不快なニオイの原因となります。
汗をかいてしまった衣料品は、クリーニングに出してスッキリ!といきたいところですが...。

汗をかいたから水洗いして欲しいというお客様のご注文を受け、カウンターでクリーニング表示を確かめたところ、
あ〜ら!綿100%のブラウスなのにドライ指定になってます!
実はこんなケース、まれではありません。むしろかなり多いのが現状です。

いくつか実例をお見せしましょう。これはぼくのお店でここ10日間にお預かりしたクリーニング品の洗濯表示です。
これは綿100%の鹿の子織りポロシャツです。胸にレーヨン系使いの刺繍があります。
これも某高級ブランドのホワイトデニムです。もちろん綿100%ジーンズですね。
このブランドのジーンズはなぜか必ずドライ指定になっています。
これも綿100%、外国ブランドのカラーシャツですね。
ここ2〜3年、カラーYシャツがポピュラーになってきましたが、直接肌に触れるシャツ類で、しかもビジネス・ユースのものが水洗い不可なのは考えものです。
 
ざっとピックアップしただけでも、カンタンに見つけることが出来ます。
メーカー側の"但し書き"には、<風合い、色合いを保つため><独特の感触を楽しんで...><縮み、型くずれの恐れが>エトセトラ、エトセトラ...。
すごいのは<欧米との衣料感覚のちがい...>
とあります。ベンツだってアルファロメオだって、日本仕様は右ハンドルですよねェ。これって、ロールス並に高級か、マセラッティ並にマニア向けの服なのかなァ...?
 
確かに水洗いは、ドライクリーニングに比べて、繊維に対するインパクトが強く、色の変色、型くずれ等が発生しやすいクリーニング法です。
 
ドライクリーニングの存在理由はそこに在るといってもいいぐらいです。しかし、衣料品のもつ性能には、ファッション性と共に、「快適使用し続けられる」という機能性も必要とされています。
 
衣生活が豊かに、また多様化して、かつての「一張羅」「おしやれ着」「高級ブランド品」も、みなさんごくごく日常的に普段着使いする時代です。
この辺にメーカーとユーザーの意識のへだたりが生じてしまっている様な気がします。
普通に、ごくごく当たり前に着用する夏物衣料や水洗いできないのが、かなりギモンに感じられてしまうのはぼくがクリーニング屋だからでしょうか?
 
ドライクリーニングは、水(ウエット)を使用しない洗い方<ドライ>なので、ドライクリーニングなのです。ん?変かしらん?
ドライ最大の利点は「ティッシュペーパーでさえも、かたちをこわさず、洗える」のでデリケートな素材に向いたクリーニング法なのですが、もともと石油等から精製された有機溶剤を用いますので水溶性の汚れ(汗)には、まさに水と油、苦手なのです。

それをなんとか除去するために、「溶剤中に水分を乳化することなく可溶化させるためにドライ用ソープを用い、ミセルを形成する」ことで、水溶性の汚れを除去するのですが、やはり限界があります。
完全に落とすことができなければ、着用とクリーニングを繰り返すうち残留してしまう汚れが生じ、それがシミや変色、異臭の原因となってしまうのですね。
その対策としてクリーニング店では、チャージ・システムとか前処理法、スプレー洗浄システム、エマルジョン洗浄システムなど、様々な技術を創り出してきました。
近年、よく耳にされると思いますが、「ウエットクリーニング」「Wクリーニング」などもドライと水洗いの両方の特性を生かしたクリーニング技術です。

また、アパレルメーカー、洗剤メーカー、クリーニング機械メーカー、クリーニング店とか協同で「W・T(ウォータートリートメント)研究会」など、新しい素材とクリーニング法を考え、商品化する動きもあります。
ちなみにメープルグループのお店も、このWT会に参加しているメーカの洗濯機械を使用しておりますが。
しかしながら、まだまだ研究途上、確立したクリーニング理論方法として一般的ではありません。

ぼくたちクリーニングに携わる者としては、お客様のニーズにお応え、よりよい品質で大切な衣料品をお返しできるように努力していますが、ここはひとつ!メーカー側にも、その洋服を着用するお客様がどんな風に使用しているかをふまえ、せめて汗をかきやすい状態で着用する夏物衣料は水洗いに対応して欲しいなァ...と、強く強く想ってしまいます。

もちろんそのためには、染色堅ろう度を上げ、防縮処理をしたり、型くずれを防ぐためしっかりした縫製をするなど、コストもかかるでしょう。でも、コストダウンのしわ寄せや、通り一遍の製品作りが、本来主役である消費者に最終的にツケを回してしまうのは、本来転倒かと思います。
水洗い不可の夏物をピックアップしていたら、こんなクリーニング表示を見つけました。

これも某ヨーロッパ高級ブランドのダウンジャケットです。
水洗い(手洗い)、ドライ不可、回転式乾燥(タンブラー)不可となっていました。
ダウン製品で雨に降られ、ペッチャンコになってしまったご経験はありますか??羽毛は水にぬれるとかたまって、お団子の様になってしまいます。よーく絞ってもそのままの状態です。
水洗い指定は問題ありません。ダウン用の洗剤を用いて洗うことが可能ですし、羽毛に含まれる油脂を落とさずに済みます。

しかし、洗った後、お団子状になった羽毛を、どうやってあのフンワリした状態に戻すのでしょうか?
クリーニング店では、タンブラーを用いて、「熱」と「たたく」という物理的作用で固まった羽毛をほぐし、ふんわりとさせます。それが「不可」だとすると...どうやればいいのかな?
静止乾燥機に入れたり、カゲ干ししながら時々手でパンパンたたいてほぐすのかな?あ、それともフトン干しの竹竿でパンパンするのかな?どちらにしても、とても手間がかかってしまいます。
クリーニングは、技術料と手間費ですので、ものすご〜〜く高い料金になってしまいますね。
結局これは、お客様にご説明して、納得して頂いた上で傷等がつかないようにしてウラ返しして、ネットに入れ、単独でタンブラー乾燥して仕上げました。

水洗いできない夏物衣料のコラムが、何だか「?なクリーニング表示」のハナシになってしまいましたが、みなさんもお洋服をお買い求めになる時は、その服をどんな風に着用するのかを頭に入れながら、クリーニング表示をチェックしてみて下さい。
そして、もし疑問に思われたなら、店員さんにお尋ね下さい。「夏物なのに、なんで〜」と。

最後に、もし洋服を作り、それを売る側の方がこのホームページを見ていただいていたなら、もう一度考えてみてください。
洋服はそれを「着用する人」のためのものです。デザインし、作り、販売する側も、僕たちのようにメンテナンスに携わる側も、すべて「装う人」のために仕事をしています。
洋服を買ったお客様が、いつも気持ちよく、愛着を持ってその服を着ることができるようになってこそ、初めて「豊かなファッションライフ」が成り立つのではないでしょうか?
そのためにできること、やるべきことはたくさんあると思います。
せめて、「クリーニングは専門店にご相談ください」はやめにしましょう。
それって、なんか、ずるくないですか?


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